
「展示会DX」という言葉には、大きく分けて二つの文脈があります。一つは、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連のソリューションや技術が集まる展示会そのものを指す使い方です。もう一つは、展示会の運営や出展企業の集客・商談プロセスにデジタル技術を取り入れて効率化する取り組みを意味します。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、レガシーシステムを刷新しなければ2025年以降に年間最大12兆円の経済損失が生じるという「2025年の崖」が示されました。この警鐘をきっかけに、多くの企業がDX推進を経営課題として位置づけるようになり、具体的なソリューションを探す場としてDX関連展示会への関心が急速に高まっています。出展を検討する企業にとっては、DXを求める企業群と直接つながれる貴重な機会であると同時に、自社の展示会運営そのものをデジタル技術で変革する好機でもあります。
この記事では、出展担当者の視点から、代表的なDX展示会の特徴を整理したうえで、出展準備の進め方やブースでのデジタル技術活用、費用感、そして会期後のフォローアップまでを一つの流れとして解説します。
Japan DX Weekは、RX Japan(旧リード エグジビション ジャパン)が主催する日本最大級のIT・DX総合展で、東京ビッグサイトや幕張メッセ、名古屋のポートメッセなごやなど複数の会場で年間を通じて開催されています。2025年春の東京開催では3日間で約5万7千人が来場しており、AI・業務自動化、社内業務DX、現場DX、データドリブン経営など幅広いカテゴリの製品やサービスが出展します。来場者にはITサービス導入の決裁者が多い傾向があり、商談に直結しやすいのが出展者にとっての大きな魅力です。
DX総合EXPOは、業務効率化や働き方改革、経営基盤強化を実現するためのDXソリューションが集まる大型展示会で、東京の幕張メッセと大阪のインテックス大阪で春・夏・秋・冬と年に複数回開催されています。2024年の東京夏開催では過去最高の460社が出展し、2025年の東京春開催では3日間で約2万5千人の来場者が見込まれるなど、規模が拡大を続けています。人事、総務、経理、DX推進、マーケティング、営業、経営者と多様な部門の担当者が訪れるため、幅広い切り口でアプローチできる点が特徴です。
ODEX(デジタル化・DX推進展)は自治体と企業のDX推進を支援するBtoB展示会で、東京ビッグサイトで開催されます。バックオフィス業務のデジタル化に特化しているため、業務効率化系のソリューションを持つ企業にとっては相性のよい出展先です。DXPOはAIやIoTなどの最先端技術を中心に展示され、中小企業でも活用できる具体的な知見が得られるイベントとして知名度を上げています。さらに、営業DX EXPOや現場DX EXPOのように特定の業務領域やシーンに特化した展示会も増えており、自社の製品やサービスが狙うターゲット層と合致するイベントを見極めることが出展成功の第一歩になります。
DX展示会の来場者は、自社のDX推進に具体的な課題を持ち、ソリューションの導入を検討している企業の担当者や決裁者が中心です。ブースを訪れた方との名刺交換やアンケートを通じて、通常の営業活動では接点を持ちにくい層に効率的にアプローチでき、短期間で多くの見込み顧客情報を集められます。対面でのやり取りを通じて相手のニーズや導入検討の温度感を直接つかめるため、質の高いリードを獲得しやすいのも展示会ならではの利点です。
規模の大きな展示会に継続的に出展することで、ターゲット市場の中で自社の存在感を高められます。ブースでの情報発信に加えて、併設されるセミナーや講演に登壇すれば、専門性を持つ企業としての位置づけをさらに強化できます。特にDX分野は参入企業が増えているため、早い段階で展示会を通じた認知拡大を始めることが競合に対する差別化につながります。
DX展示会は来場者だけでなく、出展企業同士の出会いの場でもあります。同じイベントに出展している企業との協業や販売パートナーの開拓、既存パートナーとの関係強化につなげられるケースは少なくありません。DXソリューションは単体よりも組み合わせて導入されることが多いため、補完関係にある製品やサービスを持つ企業との連携先を見つけられることは大きなメリットです。
自社が出展するだけでなく、同じ会場に並ぶ競合他社の展示内容やアプローチ手法を観察できることも展示会の価値です。どのようなメッセージが来場者の関心を集めているのか、どのようなデモンストレーションが効果的なのかを肌感覚で把握でき、自社のマーケティング戦略や製品開発にフィードバックできます。
展示会では、来場者が製品やサービスに触れたその場で率直な感想や要望を口にしてくれることがあります。オンラインのアンケートでは得にくい生の声を直接聞ける機会は、既存製品の改善や新たなサービス開発のヒントとして非常に価値が高いです。
出展を決めたら、最初に取り組むべきは目的の明確化です。新規リードの獲得数を重視するのか、既存顧客との関係深化を狙うのか、ブランド認知の拡大を最優先にするのかによって、ブースの設計や当日のオペレーション、投下する予算の配分が大きく変わります。名刺交換数、商談件数、アンケート回収数、成約率といった具体的な数値目標をKPIとして設定しておくことで、出展後に成果を正しく評価でき、次回の改善につなげやすくなります。
次に、どの業種・役職・課題を持つ層にリーチしたいのかを具体的に言語化します。DX展示会には多様な来場者が訪れるため、「広く浅く」ではなくペルソナを絞ったメッセージのほうが響きやすくなります。たとえば「製造業の品質管理部門でデータ活用に課題を感じている課長クラス」のように具体的に想定することで、ブースの訴求コピーや配布資料、スタッフの説明トークにまで一貫性が生まれます。
展示会当日のスタッフは、製品知識だけでなく来場者の課題を引き出すヒアリング力や、短時間で要点を伝えるプレゼンテーション力が求められます。ブースの入口で声をかける呼び込み担当、デモンストレーションを行う説明担当、商談レベルの対応をする営業担当というように役割を分け、事前にロールプレイングを交えたトレーニングを実施しておくと、当日の対応品質が格段に上がります。

大型のデジタルサイネージやタッチパネル式のディスプレイは、遠くからでも視認性が高く、来場者の足を止める効果があります。静止画のポスターでは伝えきれない製品の動作イメージや導入事例の映像を流したり、来場者が自分の課題に合った情報を画面上で選んで閲覧できるインタラクティブコンテンツを用意したりすることで、限られたブーススペースでも密度の高い情報提供が可能です。
製品のスケールが大きく会場に持ち込めない場合や、導入後の利用シーンを直感的にイメージしてもらいたい場合には、VRやAR技術が力を発揮します。たとえば工場向けのソリューションであれば、VRゴーグルを装着して仮想の製造ラインを体験してもらうことで、資料を読むだけでは伝わらない臨場感を提供できます。体験型のコンテンツは来場者の記憶にも残りやすく、会期後のフォローアップ時に会話の糸口としても機能します。
ブース内にQRコードを設置し、製品の詳細ページやホワイトペーパーのダウンロードページに誘導する仕組みは、手軽に導入できるデジタル施策の一つです。名刺管理ツールや来場者データの自動リスト化ツールと組み合わせれば、紙の名刺を手作業で入力する手間を省き、会期中からリアルタイムでリード情報をCRMに蓄積できます。このデータは後述するアフターフォローの精度を高めるうえでも欠かせない基盤となります。
DX展示会の出展費用は、大きく分けて出展料(小間料)、ブースの施工・装飾費、人件費、集客・広告費で構成されます。出展料は1小間(3m×3m程度)あたり45万円から90万円程度が一般的な目安ですが、展示会の規模や知名度によって幅があります。DXPOのように装飾とオンライン出展込みで38万円から出展できるプランを設けている展示会もあり、初めて出展する企業にとっては費用面のハードルが比較的低い選択肢です。ブースの施工・装飾費は出展料と同程度かそれ以上になることが多く、デザインや企画を外部に依頼すると10万円から50万円程度がさらに上乗せされます。総額では、小規模な出展でも100万円前後、大規模なブースを構える場合は数百万円規模になることを見込んでおく必要があります。
出展費用を抑える方法はいくつかあります。多くの展示会で設けられている早期申し込み割引を利用するのは基本的な手段です。ブース装飾については、主催者が用意するパッケージプランを活用すればオリジナリティはやや薄れるものの費用を大幅に削減できます。のぼりやポスターなど一部の制作物を内製化する、複数の展示会で使い回せる装飾物を最初にしっかり作り込むといった工夫も効果的です。また、国や自治体が提供する補助金・助成金制度を活用できるケースもあります。小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金、各自治体が独自に設けている展示会出展支援補助金などが該当するため、出展を決めた段階で利用可能な制度がないか調べておくことをおすすめします。
展示会で獲得したリードの価値は、時間の経過とともに急速に薄れます。会期中に集めた名刺やアンケートの情報を即日でCRMに登録し、お礼メールの送付や個別の提案資料の送付を3営業日以内に開始することを目安にすると、来場者の記憶が鮮明なうちにアクションを起こせます。来場者がブースで示した関心や質問内容に沿ったパーソナライズされた連絡を行うことで、画一的なフォローよりも大幅に反応率が高まります。
名刺交換数や商談件数といったKPIの達成状況に加えて、「どの製品・テーマへの関心が高かったか」「どのデモが最も来場者を引きつけたか」「競合他社のブースはどのような工夫をしていたか」といった定性的な振り返りも重要です。これらの情報をスタッフ間で共有し、次回の出展計画にフィードバックすることで、出展のたびに成果が積み上がるサイクルを作れます。展示会の出展は単発のイベントではなく、継続的なマーケティング施策として位置づけることで、投資に対するリターンを高められます。
DX関連の展示会は、Japan DX WeekやDX総合EXPO、ODEX、DXPOなど種類と規模が年々拡大しており、出展企業にとっては自社のソリューションをDX推進に取り組む企業群へ直接訴求できる有力なチャネルです。出展の成果を十分に引き出すためには、出展目的の明確化とKPI設定から始めて、ターゲットに合わせたメッセージ設計、デジタル技術を活用したブース演出、費用計画、そして会期後の迅速なフォローアップまでを一連のプロセスとして設計することが重要です。初めて出展する場合は、費用面のハードルが比較的低い展示会やパッケージプランから始めてノウハウを蓄積し、回を重ねるごとにブースの完成度と成果を高めていくアプローチが堅実です。展示会DXの二つの側面、つまり「DX展示会への戦略的な出展」と「展示会運営そのもののデジタル化」を両輪で進めることが、これからの出展担当者に求められる視点といえるでしょう。
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2026.02.24
Category: コラム